社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

中小企業

 ビジネススクール(BS)の学生は様々だ。他の大学院と違い、多様なバックグラウンドを持つ学生たちと触れ合えるのは楽しいし、それ自体が勉強になる。国内では、学部卒後にそのまま進学したり、社会人経験が薄い人でも進学できるBSもあるが、実際には社会人経験が長い学生が多く、働きながら通う人も多数いる。働きながら進学することを念頭に置いたBSもあり、そのような処に通うのは刺激的だ。

 社会人がメインの大学院では、先生もそれを念頭に置いて授業を進める。グループに分かれて議論する際も、皆社会人経験が豊富であることを前提にお題を振られるので、議論は実務的だ。授業も同様だ。

 BSだから実務に特化した授業になりがちで、世の中の経済に影響力の強い大企業、優良企業についての話が多い。BSに来る学生は大企業、優良企業に努めている人が多いこともあり、どうしてもそうなる。
 マーケティングや経営戦略についての内容は、大企業を念頭に置いていたとしても、中小企業でも考え方や進め方の方向性は十分に応用が効くし、事例では中小企業が成功して大企業に成長していくといったストーリーも多い。

 一方で、人事論や組織論、法務の授業内容は、中小企業の現実とはかなり異なったり応用が難しかったりするものが多い。勤怠管理に基づく問題の議論では、中小企業の学生では話すことがない。この辺の内容は、大企業と中小では住む世界が異なる。中小の人からは、授業に出席しても悲しくなるだけ、といった話も聞こえてくる。

 これらの科目では、中小の事例は出しにくいし、出したとしても話の内容は薄くなるのだろう。また、多数派である大企業の学生には参考になりにくいこともある。議論をするにはある程度内容のある大企業の事例に基づくし、そもそも中小企業在籍者では議論に参加する素材を持ち合わせていないことが普通だ。筆者も中小に努めているのでそれらの授業ではなかなか議論に参加できない。
 特に専門性の高い中小企業では、基本的に仕事は個人プレーとなりがちだ。実は筆者もそうだ。小さな企業だが、専門的な仕事をしており、筆者も専門職だ。仕事は原則として個人で進め、チームプレーは殆どない。チーム論などを議論されても参加しようがない。

 勿論、筆者にとってもこれらの授業は有益だ。中小に勤めていては一生知ることが無いようなことを教えてもらい、議論に加えてもらえる。これは社会を見る目を醸成する上で必要なことだと思っている。

 それでも、議論に参加しにくいし、質問する下地もない。多くのBSでは、皆の学びにつながる質問や発表は加点されるという仕組みがあると聞くが、それができない中小の人間であることに忸怩たる思いもある。

 中小だからこそ、BSなどで学びを深めることは必要だと思うが、こういうこともある。進学を考えている方は、頭の片隅にでも置いておくことは、後々のショックを和らげるためにも必要だろう。