社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

MBA取得は中小企業で有利になるか?

 以前から書いてきたが、企業から大学院に派遣され、MBAの取得を要求される人たちがいる。ほぼ例外なく大企業だ。大半が売上高は数千億円以上の企業ばかりだ。
 派遣される人は多数派ではなく、過半数は自腹で通っている。が、その多くも大企業の社員だ。中小企業の学生もいるが、多くは経営層だ。中小の従業員はかなり少ない。私は中小の社員なので、結構肩身が狭い思いをする。

 大企業の社員たちは、何を思って通っているのだろうか? たまに話をするのだが、殆どは「社内で有利になる」「箔が着く」といった答えが返ってくる。つまり、MBAホルダーになれば、社内で有利になる、ということなのだろう。

 我々中小ではどうだろうか? 結構難しい。ある中小から来ている友人は、社内でビジネススクールに通うことにした、と言ったら「お前は暇なのか」と上司に言われたとか。似たような話は他にも聞いた。

 私も似たようなものだ。MBAみたいなものは決して評価されないどころか、「そんな大企業の真似事みたいなのはけしからん!」みたいな雰囲気がある。だから、社内では、通っていることを秘密にしている。「勉強する暇があるのなら、仕事をしろ」と言われそうだからだ。

 一部のベンチャーや、IT系の小規模企業では、MBAが有利に働くとは聞いている。だいたい、先端的な世界にある企業であれば、中小でもMBAは役に立つのだが、それ以外では、むしろ不利に働く可能性すらあるのかもしれない。だから、私がMBAを取得しても、社外の人に言うことはあっても、社内で公言することはないだろう。あくまでも、勉強した内容を活かすだけであり、大企業から来ている学生ほどの希望は抱けない。

 会社や業界によるが、中小では学歴や学識が低い人が多い傾向があるのはご存じの通りだろう。高い見識を持った人が存在すると、その人の職務範囲だけならともかく、部署や社内全体でその見識を発揮されると、ついて来られない人が多くなり、結果として社内が混乱したり、バランスが崩れたりする。恐らく嫉妬も激しいだろう。

 私は、名の知れた大学の学部を卒業している。卒業時、健康上の問題があったので、大手には就職せず、勤務時間に配慮してくれる中小に行った。この世界では、学歴が仇になった。教養は非常に役立ったが、嫉妬も酷かった。嫌がらせは日常茶飯事だったので、その業界内で転職したが、転職先でも同じようなことがあった。私は嫉妬されないよう、目立たないように、そして教養を披瀝しないように心掛けたが、それでも嫉妬は酷かった。同僚からは「能力を活かして、実績を上げ続けるほど、嫌がらせをされる」と言われた。これが別業界への転職の契機となった。

 今の職場では、嫉妬を受けることはない。基礎的な知性が要求される仕事内容なので、同僚もそれなりに学歴や教養がある。それでも、中小であることに変わりはない。大企業に対する反感は根強い。
 
 仕事では、多くの他社と交わる。大企業に圧迫される中小の悲哀を、同僚たちは知っている。その、大企業の真似事のようなMBAは、反感の対象の象徴みたいに思われる。決して、社内で公言はできないのだ。あくまでも、勉強した内容を、自分の職務の範囲内だけで活かすしかない。

 それなのに、何故、カネと時間をかけて通うのか、という疑問もあろう。中小から来ている人間は、中小に居ながらもそのあり方に疑問を持っている。日本の中小は、今の延長上に未来はないと感じている。そう遠からず、多くの中小の没落速度が速まると感じている。人材のレベルアップしか手はない。その時に備えるという意識だ。ダメが明らかになった時では手遅れだ。

 これまでのやり方、これまでのレベル、これまでの意識では難しい。資金が危なくなってからでは、目先の課題に対して表面上の打ち手しかなくなる。それに備えたい人たちなのだ。実際には、社内で力を発揮はできないだろうとは思っている。とはいえ、中小が履歴書に入れば、たとえMBAを取得しても大手には転職できない。つまり中小の社員がMBAを取得する意義は、大手の社員ほどではない。それでも、最後の悪あがきとして何とかしたい、という想いは捨てきれない。