社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

社会人院生が得たもの

 社会人院生を終えて、最も得た財産は何だったのだろうかと考えると、それは異なる世界を同時に処理する経験なのだろうと思い当たる。

 社会人院生という立場は、周囲から「大変だよね」とよく言われる。その通りだろう。何が大変かと言えば、当然ながら二つ以上の仕事を同時にこなすことだろう。複数の案件が常に並行している状況だ。

 仕事において複数の案件を同時に進めることは珍しくない。しかし、社会人院生の場合は、仕事とは別に大学院生としても活動するという点が異なる。例えば仕事と介護、または複数の仕事などが同時に発生する。私の場合は、仕事と大学院生の両立が該当する。

 始める前は漠然と「大変だろうな」と思っていたが、実際にやってみると、「かなり」大変だ。仕事と大学院生の並行は予想していたが、実際には家庭も加わる。仕事だけの頃は、家庭のことは余暇で処理できたが、大学院生としての時間を確保すると、家庭の時間を削るしかなくなるが、全てを削減するわけにはいかない。私の場合、老人と同居しているため、削れる家事は少ない。また、持病を抱えているため、これも並行して考慮する必要がある。仕事と持病の並行だけでも十分に負荷がかかるが、それに大学院生が加わり、家事も削り切れない状況になると、生活はかなりタイトになる。

 同様に、二足どころかそれ以上の負担を抱えた同期も多くいた。社会人院生を成功させるには家族の協力が不可欠だが、協力を得ても、何も手伝わないわけではない。介護の責任を負う親や小さな子供がいる場合、家族としての役割は減らない。多くの人が、仕事・家庭・大学院といった三つの領域を同時に処理しなければならない。さらに、地域社会や親族の問題を抱えている人もいる。私のように、健康上の問題を抱えている人もいる。これらは二足ではなく、もっと多くの負担を抱えた状況だ。これが社会人院生の現実だ。特に、専門職の経営大学院では、実務経験が重要視されるため、実務経験を積んでいる方が有利だ。私が通った大学院では、数年の実務経験が要求されるが、実際には数年ではなく10年以上の経験を積んだ人が大半だ。20年以上の経験者も珍しくない。となると、ほとんどの人が一定の年齢以上であり、当然ながら何らかの問題を抱えている人が多いのは不思議ではない。

 これらの問題に対処しながら、授業を受け、レポートを書き、卒業課題を完成させることが求められる。自己管理や周囲との協調、無駄の削減が極めて重要になる。

 異なることを同時に処理する能力が大きなスキルになった。最初はそれほど大したことではないと思っていたが、実際に経験してみると、「並行」が最も困難なことだとわかった。色々な方法を試みた。例えば、エクセルでガントチャートを作成したりしたが、多くの方法はかえって手間を増やすだけだった。結局、A4の紙に手書きで数か月分の工程表をざっくりと書き、細かいことは紙の手帳で管理する方法が最も効果的だった。

 工程表には、仕事・家庭・大学院・健康の項目を設け、それらを同時に記入した。紙の手帳では、週ごとに時間をデザインして記入した。簡単な進捗状況も書き留め、工程表をクリアしたら二重線で消し込んで、机の前に貼り付け、常に意識した。特に、この方法は論文を書いている時には非常に有用だった。

 健康の項目には何を書くのかというと、特にないのだが、気圧の変動が体調に影響を与えることがあるため、中長期的な天気予報も記入し、体調の悪化をざっくりと予測してスケジュールを組んだ。中長期予報は変動するため、変更があれば工程表も更新した。あまり頼りにはならないが、何もしないよりはましで、少しは安心できた。

 おそらく、社会人院生として得た最大の成果は、この「並行」を処理する力だろう。予想以上に大変だったが、なんとか乗り越えることができた。世界の上位層の人々は驚くべき努力をしている。このようなハードルを超えられないようでは、彼らの背中を追いかけることもできない。「並行」対処に苦労したことで、少しは、彼らに近づけたのかもしれない。

皆さんも、ご自分に合った方法を見つけてほしい。