社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

ノート

 当然ながら授業中にはノートを取る。私の大学院の場合、授業で使う資料は事前にPDFまたはパワーポイントでのデータで配られているので、それを端末に入れて何らかの形で書き込むことが一般的だ。

 私は当初、A4のルーズリーフにプリントして持ち込み書き込んでいたが、分量が多く持ち運びが大変なこと、当然ながら保管も大変になってきたこと、毎回の印刷が大変で、プリンターのインクを大量に消費してしまい、月に2度はインクを全て交換する必要があること、もあり、やはり端末でノートを取るべきかと考えるに至った。

 授業で周囲を見回すとPCかタブレットを持ち込む人がほぼ全てだ。特にPC組は多く、そのため授業前はコンセントの奪い合いだ。聞くところでは、どこのビジネススクールでも状況は似たようなものだとか。紙のノートを使う人もいるが、それでもデジタルと併用で、端末を持ち込まない人はほぼいない。

 これは社会人大学院だからできることだろう。純粋な学生では端末を揃えることが難しいと思う。先生に聞いたが、今の学部では、やはり紙のノートが主流だとか。

 PCの場合、多くの人は資料を表示させ、そこに先生の話や調べた内容などを打ち込んでいる。タブレットの場合、キーボードで打ち込むかスタイラスペンで手書きで書き込むといったスタイルになる。

 タブレットでは、iPadが最大勢力だ。アプリの「GoodNote」にPDFを読み込み、それを利用する人が多い。書き込み量が多い場合、資料の間に白紙を突っ込み、そこに記入する。結構柔軟性が高いアプリなので人気は高い。科目ごとにフォルダを作ってそこに自分で調べた資料やノートも一緒に入れてしまえば、最低限の情報源になる。

 私は紙が好きだった。ペンで書くという行為が好きで、仕事でもそうすることが多かったが、準備と保管がきつくなってきたので、デジタルで管理する必要性に迫られてきた。既にテキストはスキャンしてiPadで管理しているので、一括してiPadに入れてしまうしかないと思う。
 紙は一覧性や柔軟性が長所だが、物理的な問題がどうしても生じる。完全な学生ではないので、持ち歩ける荷物には限りがある。仕事の移動中にも勉強する必要があるが、ノートやテキスト、資料を紙で持ち歩くには限界がある。デジタル利用は社会人院生には大事なポイントになるのかもしれない。

 ビジネススクールに入学する時には、ノートなどをデジタルでとる人は多いだろうなと予想していたが、実際には多いどころかほぼ全員だ。周囲との連絡や議論、共同の宿題などは全てslackやzoomだ。

 私の職場は、恥ずかしながらここまでデジタル化されていない。むしろデジタルは苦手な人が大半だ。ノートを端末でとるといった発想を持っていない人も多い。だが、ビジネススクールに進学するような人達は、デジタルで全てを処理する人が大半。自分の職場が世間の流れから取り残されていたのだと、肌で感じる。

 勿論、デジタルにも欠陥はある。一覧性に乏しいこと、端末やアプリの規格に左右されること、電源・充電が無ければ何もできなくなること、クラウドで処理することが多いが通信障害が発生すればどうしようもなくなること、が指摘できる。だから意図的にデジタル利用を避ける人はいるだろうし、私もその口だった。だからデジタルを利用すれば良いと単純には言わないが、そこに適合するかどうかは別として、世間がそのように流れていることを頭だけでなく、肌感覚でも知ることは重要だ。
 
 仕事柄、公官庁や大企業から中小や零細企業まで、様々な人と会う。特に大企業ではデジタルに弱い人が徐々に取り残されてきているが、中小零細では苦手な人も多い。情報のやり取りや管理、作成や発信に難が生じ、流れから取り残されてしまい、商売にならなくなっている企業も多く目にする。使わなくてもよいが、使えるようにしておくことは必要だろう。コロナ禍で苦しむ中小だが、デジタルの力で乗り切るところも見てきた。

 私は手書きが好きとはいえ、デジタルも結構使う。社内では最も使えるとみられるが、ビジネススクールに来てみれば私のデジタルレベルは平均的だ。つまり私の会社が遅れているということだ。そして、そういった中小企業はほかにもたくさんある。

 日本は大丈夫なのだろうか。デジタル化が答えではないとはいえ、それすらできないのは不利になる。大学院に通って、そう思うようになった。