社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

進学動機2

 次の職場では、貴重な体験を積むことができたが、労働環境はかなりブラックだった。年に一人は身体を壊して退職し、その分が補充される、それを繰り返していた。生き残るのは、仕事から逃げるのがうまい人だけ。

 私も数年で身体を壊した。そんなに簡単に退職したくはなかったが、運よく次の仕事が見つかって再び転職した。

 この仕事は、労働はきついものの、それ以外の理不尽さは少なく、また給与も良くなったので気に入っている。この仕事では、社外の様々な人と会う。それも平社員から社長まで、零細企業から巨大企業まで、多様な人々と交流を持てるのが楽しい。

 様々な人に会うとはいえ、多いのは経営層やマーケティング担当者だ。中小から大企業まで、優秀な人と会話をしていると、時代の変化を敏感に感じることができる。
 彼らは殊更能力を誇示することはないので当初は気付かなかったが、何年も付き合っていると、やはり学位や資格を持っている人が多いことが分かった。
 
 語学の資格を持っているのは当然、中小企業診断士・弁護士・簿記、、、といった資格保有者は多かった。ある企業では、海外での買い付けを、その国の弁護士資格を持っている日本人が担当しているといったこともあった。30歳位で、今後もその企業で頑張っていこうという思いを持つ人が中小企業診断士を取得するといったケースも多く目にしてきた。その中でもMBAホルダーは一定の敬意を払われていることも分かった。

 MBAホルダーなんて希少性があるからだろう、と思っていたが、大企業を中心に意外と多いことも分かった。海外で取得する人も多いが、日本国内の専門職大学院で取得する人も増えている。
 その流れは一部の中小企業でも見られる。将来有望な人を会社の金で国内外の大学院に送り、MBAを取得させるという例が、わずかだか見られ、少しずつ増えていた。名刺に「MBA」と刷り込むと嫌味にも見えるので外部には言わないだけで、ちょっとずつ増えているようだった。

 時代の流れは「高度化」だろうとは思っていたが、文系で修士以上が求められるということは、まだまだ先のことだと思い込んでいた。しかし、実際には、外から見えにくいところで、この流れは始まっているのだ。

 私の社内では全くそういった話はなかったし、同業者でも気付いている人はいなかったものの、仲良くなった商売相手と雑談してると、主流の流れではないが重視され始めているといった話が年々増えているようだった。

 ある企業では、毎年1~2人を会社の金でビジネススクールに送り込むようになっていた。また、自主的に夜間大学院に進学する人についても勤務上の配慮をするということだった。これは将来に向けての人事戦略なので機密に近い扱いで、外部へ発表されることはないが、そういう動きが底の方で始まっているのだ。

 ある企業のMBAホルダーからは「将来のためにもあなたもビジネススクールに進学してMBAでも取得したら」と言われた。
 だが、私は法学部卒で経営学には疎かった。また、私が卒業したころの法学部では、経営学を軽んじる風潮もあった。そういったことから、勉強したいという思いがあったものの、MBAは考えたこともなかった。有名大学の法学部だったので、そのネームバリューで助かったこともあったが、そのMBAからは「その考えはもう古い。学部は徐々にステータスにはならなくなるよ」とも。「世界共通で通用する資格は医師かMBA」とも言われ「あなたは見込みがあるから、考えてみては」と諭された。

 その後も多くの企業・団体・人とかかわる中で、時代の変化が見えないところで加速していることを強く実感。より一層、勉強の必要性を感じるようになった。

 どこかで、法学は経営学より上、と勝手に決めつけていたが、それも崩れていき、徐々に「MBA」を意識するようになっていった。