社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

進学動機3

 その後も仕事の中で、時代の変化がどんどんと加速していることを感じていた一方で、自分の職場や業界は遅々として変わらない、それどころか知性を軽んじるような風潮もあり、新しい流れやテクノロジーを利用することにアレルギー反応を示すような人も多い現状に、うんざりするようになっていった。

 これは自社の中で、私が時代の流れに敏感な業界や大企業を担当していることが大きいのだと思う。社内では自分だけが特に感じているようで、それに基づいて改革を主張すると周囲や上層部から睨まれる。実際に、叱られた。

 とても残念だった。私の会社では勉強することは無駄なのだろうかとも思ったが、だからこそ勉強しなければならないとも思った。

 日本がバブルに浮かれていた頃、日本勢に押された欧米ではMBAの取得が重視されるようになった。その後、日本のバブルは崩壊。あっという間に経営やマーケティングを科学的に見て判断するという海外勢に、逆に押されるようになっていった。

 何人ものマーケターからそういった話を聞かされた。それでも改善が遅い日本のあり様に、彼らは強い危機感を感じていることも分かり、私もその感覚を共有するようになっていった。

 この頃まで、MBAは海外で取得するものといった意識が一般的だったように思うが、日本でも専門職大学院の制度が創設され、国内のビジネススクールも少しずつ増え、企業派遣や自主的な進学者も増えた。

 ひょんなことから、あるビジネススクールの教授と話す機会を得た。私の所属する業界が他業界に比べて非常に遅れていること、私が相手にしている業界は徐々に経営の改善を、精神論や経験と勘ではなく科学的に進めるといった流れが始まっていると指摘された。そして、私が訪問している業界でも、MBAを始めとした、専門分野での修士号取得の流れが始まっているとも言われた。その流れはまだ緩やかでわずかだが、確実に始まっているという。
 また、変化の流れはさらに加速するという見通しであり、より勉強しなければ身を守れないとも言われた。実際に通っている学生たちは口々にそう言っているという。

 それでも進学は躊躇する。私の家庭状況から、退職して昼間部の大学院に進学するという選択肢はない。夜間や休日を使って働きながら通うことになる。忙しい中で可能なのだろうか? 家には老人もいるが大丈夫だろうか? 学費は大丈夫か? といった疑問も湧いた。

 この頃には進学という選択肢が頭に入り込んでいたが、勉強するなら自分で自宅で資格取得を目指す方が効率的ではないか、という思いもあった。中小企業診断士と簿記を取得すれば良いのではないか、などだ。

 これらについて、プライベートの時間を使って調べるようになった。それが2019年のこと。その翌年にコロナ禍が世界を襲う。これが私の思いを後押しした。