社会人院生記

おっさんの社会人大学院生日記です。

訳語

 いつぞや、大学院の友人と話をしていて「なんで、経営学は横文字のカタカナばかりなのか?」という話題が出た。日本における経営学が若い学問で、まだ翻訳が着いていっていないとか、日本社会の現実が最先端に追いついておらず、翻訳するに適切な用語が作りにくいとか、経営学自体がグローバルな展開を見せており、共通の用語で進めた方がやりやすい、などといった意見が出た。正解は分からないが、恐らくはそんなところだろうと感じる。

 例えば「コーポレートファイナンス」とか言っても、大抵の一般人には、何のことだか分からない。これは、企業が生み出す価値を最大化するために資金調達をして、事業などに使い、出資をしてくれたところに返済や還元をしていく活動のことを指す。この枠組みの話だけなら、当たり前の話をしているだけだが、「コーポレートファイナンス」と書くだけで、一般人には高いハードルとなる。

 明治期に、日本人は西洋の文物を輸入するにあたり、様々な訳語を生み出した。多くの苦労があっただろうことは、想像に難くないが、日本の制度や法律が、カタカナのオンパレードになることを防いだ。
 当時は、カタカナの訳語に馴染みが無いことから、積極的に訳語を生み出すことが、新制度の普及に資するものだったのだろうが、他にも、論語にある「必ずや名を正さんか」の心理があったのだろうという人もいる。

 現代では、下手に訳語を生み出すと却って混乱もしそうでもあるので、訳せば良いというわけでもないだろうが、本や論文を読んでいても、カタカナのオンパレードでは読みにくい。また、漢字の単語の方が意味を取りやすいこともあり、もう少し訳語が増えたらなあ、とも思う。

 日本では、経営学はまだマイナーな分野のように思うが、その理由の一端に、言葉のとっつきにくさもあるのではないかと感じる時もある。学者の方々には、是非、良い訳語を生み出してもらいたい。